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ボルネオの現実、写真で映し出すーー写真家・柏倉陽介
ボルネオの現実、写真で映し出すーー写真家・柏倉陽介

ボルネオの現実、写真で映し出すーー写真家・柏倉陽介

2024/10/04・byオルタナ編集部オルタナ編集部

ネイチャーフォトグラファーとして活躍する柏倉陽介さんは、15年以上にわたり、ボルネオの自然や野生生物を撮り続けてきた。パーム油の原料となるアブラヤシのプランテーション開発が進み、野生動物が棲み処を奪われている現実を写し出す。柏倉さんに、その思いを聞いた。


柏倉陽介( かしわくら ようすけ)
ネイチャーフォトグラファー。神奈川と北海道礼文島を拠点に、自然分野を撮影。米国立スミソニアン自然史博物館、ロンドン自然史博物館、国連気候変動枠組条約締約国会議などで環境をテーマとした作品を展示。ナショナルジオグラフィック国際フォトコンテストなど主要な国際写真賞に入賞し、国際モノクローム写真賞では審査員を務める。


■棲み処を失った野生生物の現実


――柏倉さんがボルネオの環境問題を知ったきっかけについて教えてください。


危機に瀕するボルネオのゾウ

15年以上前、サラヤが企画したスタディーツアーで初めてボルネオ島を訪れました。はじめは、ただただ野生動物との出会いに心を躍らせていました。


キナバタンガン川をクルーズしながら撮影していると、ボルネオゾウやオランウータン、テングザルなど、たくさんの野生動物が次々に現れました。「すごい、すごい」と興奮しながら、夢中でシャッターを切りました。


ところが、同行していた環境保全団体ボルネオ保全トラスト・ジャパンの方から、「なぜ、こんなにたくさんの動物が現れるか分かりますか」と聞かれ、答えることができませんでした。


周りの森をよく見ると、空や向こう側が透けて見えるほど、木々がまばらでした。


その方から、アブラヤシのプランテーション開発が川岸まで迫っていることを教えてもらい、質問の意味を理解しました。動物たちは、開発によって棲み処を奪われ、わずかに残された河岸の森に追いやられたのです。


ボルネオの野生生物が置かれた状況を知り、写真に対する意識が変わりました。それまでは、大自然を舞台にしたエクストリームレースや山の風景など、「かっこ良い」「きれい」な写真を撮っていましたが、この現実を伝えなければと思ったのです。


わずかに残った熱帯雨林。プランテーション開発が川岸まで迫っている