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生物多様性増進法が成立、自然保護に「民間の力」を
生物多様性増進法が成立、自然保護に「民間の力」を

生物多様性増進法が成立、自然保護に「民間の力」を

2024/07/25・by小林 光(東大先端科学技術研究センター研究顧問)小林 光(東大先端科学技術研究センター研究顧問)

記事のポイント


  1. 2024年の通常国会で生物多様性増進法が成立した
  2. 生物多様性の増進のために民間の力を活用しよう、という狙いだ
  3. どうすれば、この法律を役立てていくことができるのか


■小林光のエコめがね(42)■


2024年の通常国会で「地域における生物の多様性の増進のための活動の促進等に関する法律」(生物多様性増進法)が成立した。いろいろな内容を含んでいるが、要すれば、民間の力を、自然保護へ、もっと正確に言えば生物多様性の増進のために活用しよう、という狙いの政策である。


この「エコめがね」では、民間の力、特にビジネスを通じて自然環境保全を進ませていく動きを報告し、その一層の活発化を訴えてきたところなので、今回の、新政策にも大なる関心を払っている。そこで、今回は、この法律を役立てていくためのポイントを考察してみた。


■ 民力の活用にはすでに歴史がある


公益社団法人日本ナショナル・トラスト協会がまとめた「ナショナル・トラスト活動と税制度」

そもそも自然の保全は、各種の公益の中でも、私益からは相当に離れた位置にある。私たちが毎日吸う空気の健全さ、毎日飲む水の安全などは、私益と密接な関係にある価値であって、それを守ることにほとんどの人は違和感を覚えないだろう。


けれども、どこか遠い地方にある希少な植物、鳥や昆虫、きれいな景色を守ることにどれほどの価値があると言うのだろう。


その価値を測定するためには特別な手法が用いられたりするし、価値自体も、私人が直接享受できる価値としてではなく、社会のポートフォリオの中にそうしたオプションを残しておく価値として理解がされることもあるほどである。


こうしたことから、自然保護は、政府の仕事と考えられ、長い間、公的な規制の結果として実現されてきた。例えば、国立公園の指定と開発規制などである。


私自身の経験から見ると、最初の風穴が開いたのが、ナショナルトラストに対する税制支援であった。