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河合塾が「気候変動懐疑論」を普及、抗議の声相次ぐ
河合塾が「気候変動懐疑論」を普及、抗議の声相次ぐ

河合塾が「気候変動懐疑論」を普及、抗議の声相次ぐ

2024/07/25・by長濱 慎(オルタナ副編集長)長濱 慎(オルタナ副編集長)

記事のポイント


  1. 気候変動の主原因が人間由来の温室効果ガスにあることは、世界的な合意に
  2. これと異なる説の講演会を開いた河合塾に、異議を唱える署名が集まった
  3. 「懐疑論」を紹介することは、誤った認識を広げかねないと危惧する声も


昨今の気候変動の主原因が人間の活動で生じた温室効果ガスにあることは、今や世界的な合意となった。一方で、気候変動の存在や人間活動の関与を否定する「懐疑論」も根強い。6月末には大手予備校の河合塾が講演会「『温暖化』の嘘と実」を開き、これに異議を唱える署名は3週間で5000筆を超えた。環境NGOや研究者も、科学を巡る多様な意見として懐疑論を紹介するのは誤った認識を社会に広げかねないと危惧する。(オルタナ副編集長・長濱慎)


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気候変動による被害を受ける若者世代が、署名を立ち上げた(Change.orgより)

懐疑論の紹介はレピュテーションリスクに


地球温暖化など気候変動の主原因が人間の活動にあることは「疑う余地がない」。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の「AR6・WG1(第6次評価報告書・第1作業部会報告書)」(2021年8月)は、こう明記した。「人間の活動」とは、主に化石燃料(石炭、石油、天然ガス)による温室効果ガスの排出を指す。


IPCCは、気候変動に関する科学的・技術的・社会経済的な知見を評価する政府間組織として1988年に設立。AR6・WG1は、64ヵ国から集まった200人以上の気候や環境の専門家が執筆した。パリ協定の1.5度目標や2050年ネット・ゼロといった国際的な合意は、IPCCの知見をベースにしている。


一方で、気候変動の存在や人間の関与を否定する「懐疑論」も根強い。河合塾は6月30日、IPCCに否定的な田中博・筑波大学名誉教授を大阪校に招き、講演会を開いた。タイトルは「『温暖化』の嘘と実『気候危機は存在しない』宣言の衝撃!」だ。


これに異議を唱えるウェブ署名「河合塾は、地球温暖化の懐疑論を広めないでください」は、7月19日までの約3週間で5000筆以上を集めた。署名を立ち上げた若者グループ「フライデーズ・フォー・フューチャー・東京」の須賀遥翔(はるか)さんは、こう話す。


「河合塾は法人の方針として、地球温暖化を取り組む課題の一つにあげている。にもかかわらず、なぜ気候変動に否定的な講演を行うのか。河合塾に限らず、こうした講演を行えば抗議の声をあげられたり、企業イメージが低下したりする恐れがある。そのことを社会に広く認知してもらうきっかけにしたい」